
ニュースはすでに配信されましたが、あらためてご報告させてください。
このたび、2026年CFDA/Vogue Fashion Fundのファイナリスト10組に選出していただきました。
なんじゃそりゃ?
簡単に言うと、アメリカを代表する次世代デザイナーを発掘するプログラムです。
ファッション、アクセサリー、フットウェア、ジュエリーなど、あらゆるカテゴリーから数百件を超える応募が集まり、その中からわずか10組だけがファイナリストとして選ばれます。
日本人のファインジュエリーデザイナーとして初の選出と聞き、とても光栄に思っています。
最初にCFDA社長から電話をいただいた時は、正直なところ精巧な詐欺電話かと思いました。
ところが翌朝、ニュースが解禁され、友人たちからの連絡がひっきりなしに届いた。
鳴り止まないスマートフォンを見て、ようやく「ああ、これは現実なんだな」と実感したのです。

普段はあまり緊張しない性格なのですが、この時ばかりは珍しく口から心臓が飛び出そうな気持ちでした。
報告を受けてから二日間ほど体調を崩したほどです。
ファイナリスト発表から一週間後。
6月10日の朝8時、世界貿易センターにあるVogue本社でプレゼンテーションを行いました。

その朝、ユニオンスクエアからシティバイクに乗り、ダウンタウンへ向かった。
ソーホーを抜け、世界貿易センターへ。
ニューヨークの南へ向かってペダルを漕ぎながら、涙が溢れました。
12年前、何者でもなかった自分が、同じ街を走っていたことを思い出したからかもしれない。
景色は変わらないのに、自分だけが変わっていった。
CFDAのCEOステーブン氏、チェアマンであり尊敬するファッションデザイナーのトム・ブラウン氏、Vogue USの新編集長クロエ・マル、Instagramファッション部門のエヴァ・チェン氏をはじめとする審査員の方々の前で、「ミラモアとは何か」を伝える15分間。
Designed in New York, Handcrafted in Japan の意味。KINTSUGIコレクション。そして、なぜKINTSUGIなのか。
最後の晩餐を思わせるような長いテーブルの向こう側に、10人の審査員たちが並ぶ。

テーブルの端から端まで歩きながら、ジュエリーを手に取り、自分のコンセプトやデザインを伝えていく。
これまで数え切れないほどのブランドやコレクションを見てきたプロフェッショナルたちが、頷き、写真を撮り、笑顔を見せてくださる。
今回ミューズを務めてくれたのは、ニューヨークの友人であり、アーティストマネジメント会社の創業者であるアンさん。緊張で胸が高鳴る中、彼女がミラモアを身につけ、堂々と審査員たちの前に立つ姿を見て、不思議と心が落ち着いた。ミラモアらしい引き算の美学、アティチュード、オーラ。そしてジュエリーのスタイリングだけで勝負した。
その夜はキックオフカクテルパーティ。
CFDAに関わるアメリカを代表するデザイナーたちが集まり、その光景を眺めながら、ふとこう思いました。
「ああ、自分はアメリカ代表のデザイナーの一人として、ここに立っているんだな」と。
ニューヨークへ移って12年。
正直に言えば、思い描いた通りのキャリアではありませんでした。
外から見れば華やかに映ったかもしれません。
けれど自分の中では、ずっともがいていました。
2019年にミラモアを立ち上げた時もそうです。当時の自分は傷だらけで、ボロボロでした。
だから願掛けのような気持ちで、KINTSUGIリングをデザインし、自分自身を継いだのです。
その時の思いが、今もミラモアの原点になる。
あれから7年。
そしてニューヨークへ来て12年。
こうして認めていただけたことを、素直に嬉しく思います。
誇りにも思います。
かつて思い描いていたアメリカンドリーム。
もう諦めようかと思った矢先に、舞い降りてきたチャンスだった。
それを掴んだというよりも、一瞬一瞬を噛みしめている感覚に近いかもしれません。
もちろん、ファイナリストになったからといって、ブランドが急成長するわけではありません。7年間、チームと共に土を耕し続け、根を深く広く張ってきました。
今回の選出は、ようやく土の中から小さな芽が顔を出したような感覚です。
花が咲いたわけではない。
けれど確かに、次の季節が始まった。そんな気がしています。
ニューヨークはファビュラス。けれど、その裏側には厳しさもある。
この街で苦しみ、悩み、もがいたからこそ、KINTSUGIという考え方に辿り着けた。
ニューヨークがなければ、KINTSUGIは生まれなかった。
そしてKINTSUGIがなければ、ミラモアも存在していない。
だから自分にとって、DESIGNED IN NEW YORKとは単にデザインした場所を指す言葉ではない。
ニューヨークで経験した葛藤や挫折、出会い、挑戦。
そのすべてによって形づくられたという意味なのだ。
HANDCRAFTED IN JAPANは、日本の職人技への敬意。
DESIGNED IN NEW YORKは、自分の人生そのものへの敬意なのかもしれない。
だから今回、ファイナリストに選ばれたこと以上に、そのKINTSUGIという思想やデザインが認められたように感じられたことが嬉しかった。
最終発表は10月20日。
それまでにも、さまざまな課題や挑戦が待っています。
ですが、大きなプレゼンテーションを終えた今は、ひとまずニューヨークの夏を楽しもうと思います。
また、ご報告させてください。