ニューヨークのジョージ。〜キャッスル編〜

コラム

「チュン、チュン」「ぴよぴよ」と、小鳥のさえずりで目覚める。
ここは「キャッスル」と呼ばれる場所。

ピーポー、ピーポーと鳴り響くマンハッタンの耳障りなサイレンとはうって変わり、キャッスルは自然に囲まれた静かで安らぐ特別な空間。

マンハッタンから北に車または電車で2時間のアップステートニューヨークに位置するキャッスル。築100年で個性のある家。
お城ではないけど、キャッスルと呼んでいるだけです。

キャッスルの風景 1

海のあるハンプトンは有名だが、アップステートは山と川があり、四季を通じて魅力的。
春には色とりどりの花が咲き、夏は川遊びとハイキング、秋には美しい紅葉、冬はスキーも楽しめる。
アップステートニューヨークは四季折々の美しさがある知る人ぞ知るスポット。

自分にとってここは、創作活動をする場所であり、唯一リラックスできる憩いの場。
まさにこの環境でこの原稿を執筆しています。

そよ風が運ぶ甘い花の香り。
特にお気に入りはコリアンライラックで、5月中旬から下旬にかけて花咲く木、淡い紫の花が強い香りを放つ。
芝生を刈った匂いや雨の匂い、焚き火の匂い、木々や庭で育てているハーブの匂いが混じり合う。

キャッスルの風景 2

この古い井戸の隣にある大きな木は「ブラックウォルナット」と呼ばれている。
この木の緑色の実からは、シトラスに似た不思議な清涼感のある香りがミラモアのキャンドルのインスピレーションの源にもなった。

キャッスルで感じるこの香りを活かして、さらに香水やキャンドルを作ってみたいですね。

年に二回の来日では、分刻みのスケジュールで日本出張をこなします。
お客様と直接話しをして、リアルな声を聞きます。
新作の制作のために、東京の金町アトリエで次回のコレクションを進めたり、金沢で陶芸を楽しんだり、東京の師匠のもとで書道を学びます。

スポンジのように吸収したインスピレーションを全てキャッスルで考えをまとめて形にし、マンハッタンのオフィスでデザインに落とし込んでいる。

頭に余白があるから作り上げられる訳であり、常にお世話になった古い考えやアイデアを捨てる作業もし、日常から離れたこの世界観で様々なものを創っています。

キャッスルの風景 3

この独自の制作方法を続けて5年。快適なリズムと心身のバランスを保てている。

デスクで数時間居座って作るのも良いが、ヴィンテージのリクライニングチェアでおやつを食べながらデザインにブラシアップをかけるのも面白い作業。

庭には数え切れないほどの植物と花があり、スリッパに履き替えて自前のハサミで美しい命を自分でこねた陶芸作品に生け、それを自分で描いた書の掛け軸と組み合わせる。

自分の作品をジュエリーから飛び越えて「自分らしさ」と訴えたいメッセージの点と点をつなげて線にするのは究極の一人遊びなのかもしれない。

地元の畑で採れた野菜や肉を金継ぎされた皿に盛り付け、口にするたび、そよ風が顔を撫でるたびに、「美しい」とついため息をつく。

キャッスルの風景 5
キャッスルの風景 6

キャッスルにいると、同じ日なんてないのだなと教えてくれる。
今日咲いた花は明日には枯れるかもしれないし、黄色だった葉が真緑に変わるかもしれない。
この世界に存在するものすべてには扱いに注意が必要で、毎日一生懸命に、悔いなく生きたいと思えるのです。

クリエイティブオアシスである「キャッスル」、次は何を作ろうかな。

稲木ジョージ
ミラモア創設者&金継ぎ哲学者
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